株式会社 栄養・病理学研究所

Institute of Nutrion & Pathology Inc.

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トップトピックス「日本の養豚農家における離乳仔ブタのブタ繁殖障害・呼吸障害症候群ウイルス及びサーコウイルス2型の浸潤」

「日本の養豚農家における離乳仔ブタのブタ繁殖障害・呼吸障害症候群ウイルス及びサーコウイルス2型の浸潤」

雑誌名:Animal Science Journal
ジャンル:原著論文(査読あり)
掲載年:2010年
原題:Prevalence of porcine reproductive and respiratory syndrome virus and porcine circovirus type 2 in piglets after weaning on a commercial pig farm in Japan.
研究機関:京都府立大学生命環境学部,株式会社栄養・病理学研究所(第二著者・塚原),一般財団法人日本生物科学研究所,有限会社あかばね動物クリニック
弊社職員の役割:研究企画,ブタ採血,結果考察,論文執筆

2010年1月にAnimal Science Journal誌に掲載されました「日本の養豚農家における離乳仔ブタのブタ繁殖障害・呼吸障害症候群ウイルス及びサーコウイルス2型の浸潤」について解説いたします。

内容解説:2019年現在でも,養豚農家はブタ繁殖障害・呼吸障害症候群ウイルス(PRRSV)及びサーコウイルス2型(PCV2)感染症に悩まされておりますが,過去と比較すると随分と管理できる様になってきました。本研究は,約10年前の一般的な一貫経営農家における,離乳舎へ移動後の仔ブタ血中PRRSVとPCV2濃度と,抗体価の継時的な変化を測定しております。PRRSV及びPCV2濃度はreal-time PCR法で行い,既報どおり分析しております。PRRSVの抗体価はIDEXX 社製の市販ELISAキットを用い,PCV2抗体価は共著者になって頂いております日生研様に測定をお願いいたしました。
本農場では離乳時のPRRSV抗体価が陰性となっていたことから,母豚のPRRSV管理を行う前段階にあることがわかります。一方で離乳後7日には全個体の血液中からPRRSVが検出されたことから,離乳舎へ移動した直後から一気に水平感染したことがわかります。その後離乳後28日以降からPRRSV抗体価が陽性に転じる個体が認められる様になりますが,PRRSVはその後も長らく血液中に確認できています。これは我々が通常目にするPRRSVの動態とは明らかに異なっていることから,複数のPRRSV株による段階的な感染の可能性も考えられました。PCV2に関しては,離乳時には既にPCV2が血中に認められ,またPCV2抗体価も陽性であったことから,すでに母豚への感染が起こっており,移行抗体が仔ブタのPCV2感染を遅らせていることがわかります。
PRRSVやPCV2は,マクロファージ内に感染し免疫不全を誘発するウイルスであるため,単体での感染では症状を確認することが難しく,現在でも血中のウイルス濃度をreal-time PCR法で確認することで農場内のウイルス動態をつかんでおります。弊社では本研究の報告後,継続的にPRRSV及びPCV2のreal-time PCR検出についてご依頼頂いております。現在では,これらのウイルスのみならず,ブタ流行性下痢(PED)ウイルスなどについてもPCR検出する体制を整えております。一方で,弊社は研究機関ですので,PCR検出は診断ではなく研究目的での検査であることを念のため申し上げておきます。