株式会社 栄養・病理学研究所

Institute of Nutrion & Pathology Inc.

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トップトピックス「盲腸静脈血,門脈血,末梢血中濃度から予測する大腸内短鎖脂肪酸生産量」

「盲腸静脈血,門脈血,末梢血中濃度から予測する大腸内短鎖脂肪酸生産量」

書籍名:腸内細菌―宿主のクロストークと食事要因 (ISBN: 978-4-7679-6211-5)
ジャンル:書籍分担執筆
掲載年:2019年
原題:同上
研究機関:株式会社栄養・病理学研究所(単独著者・塚原)
弊社職員の役割:第5章執筆

2019年5月に建帛社から出版されました書籍「腸内細菌―宿主のクロストークと食事要因」内の「盲腸静脈血,門脈血,末梢血中濃度から予測する大腸内短鎖脂肪酸生産量」について概説をいたします。

内容解説:腸内細菌による消化管内発酵の指標としてしばしば短鎖脂肪酸を測定します。生体が吸収した短鎖脂肪酸はエネルギー源になるなど生理的効能があるため,短鎖脂肪酸の生産亢進とそれに伴う吸収量の増加は健康増進の指標と考えれられています。
これまで,糞便や腸管内容物中の短鎖脂肪酸濃度を測定し,大腸発酵を推定しておりましたが,その方法だけでは正しく大腸発酵を評価できないケースがあることがわかってきました。腸内細菌によって生産された短鎖脂肪酸は,迅速に粘膜上皮から吸収されるからです。弊社では,大腸粘膜から吸収された直後である盲腸静脈中の短鎖脂肪酸濃度を測定することで,短鎖脂肪酸吸収量を推定できることを可能に致しました。
弊社では短鎖脂肪酸濃度の測定系を2種類用意しております。一方は従来法であるイオン排除高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた分析系であり,他方はより微量な短鎖脂肪酸濃度でも分析できるようにした,ガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)を用いた分析系です。イオン排除HPLCでは,コハク酸,乳酸,ギ酸,酢酸,プロピオン酸,n-酪酸,iso-酪酸,n-吉草酸,iso-吉草酸の9種類を一斉分析致します。GC-MSでは,酢酸,プロピオン酸,n-酪酸の3種類のみでの分析でしたが,最近さらに改良を加え,酢酸,プロピオン酸,n-酪酸,iso-酪酸,n-吉草酸,iso-吉草酸,カプロン酸まで測定可能としております。本分析系は2019年6月に岡山で開催されました第26回クロマトグラフィーシンポジウムで報告を行っており,現在Chromatography誌に投稿すべく準備をしています。投稿が受理され,掲載されましたら改めてご報告するように致します。