株式会社 栄養・病理学研究所

Institute of Nutrion & Pathology Inc.

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トップトピックス「離乳はブタ回腸のパイエル板発達と遺伝子発現プロファイルを顕著に変える」

「離乳はブタ回腸のパイエル板発達と遺伝子発現プロファイルを顕著に変える」

雑誌名:Frontiers in Immunology
ジャンル:原著論文(査読あり)
掲載年:2015年
原題:Weaning markedly affects transcriptome profiles and Peyer’s patch development in piglet ileum.
研究機関:京都府立大学生命環境学部,アバディーン大学,株式会社栄養・病理学研究所(第二著者・塚原),豊橋飼料株式会社
弊社職員の役割:研究企画,剖検,病理組織標本作製,結果考察

2015年12月にFrontiers in Immunology誌に掲載されました「離乳はブタ回腸のパイエル板発達と遺伝子発現プロファイルを顕著に変える」について解説いたします。

内容解説:養豚農家では,生後3~4週で産仔を離乳させることが一般的ですが,分娩ストールの制限などから,さらに早期に離乳させることもあります。これらは主に母豚や農家の都合であり,仔豚の都合はあまり考えられていません。本研究では,仔豚にとっての適切な離乳時期を明確にするため,14日齢,21日齢,28日齢で離乳させた仔豚の腸管発達の違いを遺伝学的・病理組織学的に検討を行いました。
遺伝学的な解析は,回腸粘膜からtotal RNAを抽出して,mRNA発現の網羅的解析(DNAマイクロアレイ)を行ない,遺伝子発現の差を比較検討しております。また,バリデーションのために複数の遺伝子(SLA-DOA, VAV1,ICAM1)のmRNA発現をreal-time PCRを用いて定量しました。病理学的解析は,回腸部小腸組織のヘマトキシリン・エオジン染色標本を用いてパイエル板の面積を算出し,比較しています。
その結果,ほ乳中の仔豚であっても,とくに14日齢から21日齢にかけて回腸粘膜の免疫関連mRNA発現は変化することがわかり,また離乳によっても変化することがわかりました。14日齢で離乳した場合,継続してほ乳した仔豚とは腸管の遺伝子発現が明確に異なり,腸管の正常な発達が停止していました。パイエル板面積も同様の傾向を示し,離乳によってパイエル板の発達が停止しました。以上の結果から,14日齢での離乳はその後の肉豚の発育に深刻な悪影響を及ぼすことが考えられ,少なくとも21日齢の離乳,できれば28日齢までほ乳を継続する方が仔豚の離乳後発育が良好になると考えられました。
本研究のように,網羅的な解析(今回はDNAマイクロアレイ)と弊社が得意とする病理組織学的な解析を有機的に組み合わせることで,より精度の高い,説得力のある研究成果を得ることができております。病理組織学的解析はもちろん,網羅的な様々な解析についても受注しておりますので,お気軽にご相談いただければ幸いです。