「繁殖成績の異なる繁殖母豚糞便の腸内細菌叢機能プロファイリングのための全ゲノムメタゲノム解析」
雑誌名:Microorganisms
ジャンル:原著論文
掲載年:2024年
原題:Whole-genome metagenomic analysis of functional profiles in the fecal microbiome of farmed sows with different reproductive performances.
研究機関:摂南大学農学部,株式会社栄養・病理学研究所(第二著者・塚原)
弊社職員の役割:実験企画,結果考察
内容解説:母豚の繁殖成績と腸内細菌叢が関連することは以前ご紹介しました。母豚の繁殖成績と腸内細菌叢との関係性をより深く理解するために,繁殖成績の高い母豚と低い母豚の糞便中の微生物機能プロファイルを,全ゲノムメタゲノム解析を用いて検討しました。繁殖成績が高い3つの農場から30頭の母豚(H群),繁殖成績が低い3つの農場から30頭の母豚(L群)を選抜し,糞便を採取しました。DNA抽出後,微生物DNAを対象とした全ゲノムメタゲノム解析に供しました。バイオマーカー探索解析の結果,H群に最も多くみられる機能として「炭水化物の輸送と代謝」が検出され,さらに炭水化物代謝酵素について詳細に解析したところ,H群では食物繊維,とくにセルロースとペクチンを分解する能力が高いことが明らかになりました。また,H群はL群よりも糞便中の短鎖脂肪酸(SCFA)濃度が高く,セルロース及びペクチン分解遺伝子の存在量は糞便中のSCFA濃度と有意な正の相関を示しました。分類学的解析では,セルロース及びペクチン分解に関与する菌群としてプレボテラ,トレポネーマ,ルミノコッカス及びフィブロバクターの寄与が大きいことが示されました。以上の結果から,母豚の繁殖成績の向上は,セルロース及びペクチンを分解する微生物の能力の高さと関連する可能性が示唆されました。