株式会社 栄養・病理学研究所

Institute of Nutrion & Pathology Inc.

株式会社 栄養・病理学研究所

トップトピックス「離乳期仔ブタへの殺菌乳酸菌体EC-12の経口給与は,脾細胞及び腸間膜リンパ節細胞の抗ウイルス性サイトカインであるIFN-γとTNF-αの遺伝子発現を亢進させる」

「離乳期仔ブタへの殺菌乳酸菌体EC-12の経口給与は,脾細胞及び腸間膜リンパ節細胞の抗ウイルス性サイトカインであるIFN-γとTNF-αの遺伝子発現を亢進させる」

雑誌名:Bioscience of Microbiota, Food and Health
ジャンル:原著論文
掲載年:2013年
原題:Oral administration of EC-12 increases the baseline gene expression of antiviral cytokine genes, IFN-gamma and TNF-alpha, in splenocytes and mesenteric lymph node cells of weaning piglets.
研究機関: 京都府立大学生命環境学部,コンビ株式会社,株式会社栄養・病理学研究所(第五著者・塚原)
弊社職員の役割:研究企画,剖検,腸管採材,結果考察

2013年8月にBioscience of Microbiota, Food and Health誌に掲載されました「離乳期仔ブタへの殺菌乳酸菌体EC-12の経口給与は,脾細胞及び腸間膜リンパ節細胞の抗ウイルス性サイトカインであるIFN-γとTNF-αの遺伝子発現を亢進させる」について解説いたします。

内容解説:離乳前後は免疫的に不安定ということもあり,ブタは多くの疾病に罹患します。とくに近年,サーコウイルス2型(PCV2)やブタ繁殖障害呼吸障害症候群ウイルス(PRRSV)などのウイルス性疾患による経済的な被害が深刻化しています。最近ではインフルエンザ予防効果がある乳酸菌について数多くの報告があるなど,乳酸菌の抗ウイルス効果がひろく知られるようになりました。本稿では,乳酸菌給与による,離乳仔ブタの,抗ウイルスに関連するサイトカインの遺伝子発現について検討を行いました。離乳期仔ブタを2群に分け,1群には乳酸菌のひとつであるエンテロコッカス・フェカリスEC-12株の死菌体を給与しました。他方は無給与対照群としました。10日間の継続給与後,剖検を行い,小腸組織,腸間膜リンパ節,及び脾臓を採取しました。これらの組織から細胞を分取し,上記PRRSV,ブタ流行性下痢ウイルスを抗原として培養を行いました。この時,培養液中にEC-12も添加する群も設けました。培養後各細胞のIFN-ガンマ及びTNF-アルファのmRNA発現を測定したところ,腸間膜リンパ節細胞ではIFN-ガンマが,脾細胞ではTNF-アルファ発現がEC-12を経口で給与したブタで亢進しておりました。一方でウイルス抗原によっての抗ウイルス関連のサイトカイン発現は亢進しませんでした。以上の結果から,乳酸菌(エンテロコッカス・フェカリスEC-12株)の死菌体をブタへ給与することで,ウイルス抗原に対する免疫反応は亢進しませんでしたが,抗ウイルスに関連するサイトカイン発現が亢進することがわかりました。
乳酸菌などの給与評価で,生体を使ったin vivo試験はよく実施しますが,なかなか結果を伴わない場合があります。その場合,今回のように免疫細胞を取り出し,培養液に抗原として乳酸菌を加えることで鋭敏に免疫反応を検出できるケースがあります。お手持ちの乳酸菌などの機能性食品でなかなか結果を伴わない場合には一度このような方法をご検討されてはいかがでしょうか?その場合は是非弊社に評価を委託いただければ幸いです。