株式会社 栄養・病理学研究所

Institute of Nutrion & Pathology Inc.

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トップトピックス「ほ乳から離乳期にかけての,ブタ大腸発酵によって生産された短鎖脂肪酸の生産・吸収と血液内分布」

「ほ乳から離乳期にかけての,ブタ大腸発酵によって生産された短鎖脂肪酸の生産・吸収と血液内分布」

雑誌名:Nutrients
原著論文(査読あり)
掲載年:2018年
原題:Production, absorption and blood flow dynamics of short-chain fatty acids produced by fermentation in piglet hindgut during the suckling-weaning period.
研究機関:京都府立大学生命環境学部,京都大学農学部,豊橋飼料株式会社テクニカルセンター,株式会社栄養・病理学研究所(最終著者・塚原)
弊社職員の役割:研究統括,研究企画,採材,腸管内容物中有機酸(コハク酸,乳酸,ギ酸,酢酸,プロピオン酸,イソ酪酸,n酪酸,イソ吉草酸,n吉草酸)濃度測定,血中微量短鎖脂肪酸(酢酸,プロピオン酸,n酪酸)濃度測定,腸管粘膜の短鎖脂肪酸トランスポーターおよびタイトジャンクション関連タンパク質(occuludin)のmRNA発現解析,結果考察,論文執筆

2018年9月にNutrients誌に掲載されました「ほ乳から離乳期にかけての,ブタ大腸発酵によって生産された短鎖脂肪酸の生産・吸収と血液内分布」について解説いたします。

内容解説:ブタは数週間のほ乳期間を経て離乳し,母乳から飼料を食べ始めるようになります。本研究では,ほ乳から離乳期までの腸管内での短鎖脂肪酸の生産,およびそれらの腸管からの吸収・血液内分布について検討を行いました。
なお,本検討を行うために,盲腸内容物中の短鎖脂肪酸濃度をイオン排除HPLCで測定しております。また,盲腸静脈血,門脈血および末梢血中の微量短鎖脂肪酸濃度をGC-MSで測定しております。現在GC-MSを用いた分析は,改良を加え続けており,この論文で使用した分析法よりもさらに進化しております。改良した点につきましては,後日ご紹介させていただこうと考えております。現在実施している分析法につきましては,弊社担当までお問い合わせ頂ければ幸いです
 それでは,以下に本研究で解明できた点について列挙いたします。

(1)ほ乳期でも盲腸内で短鎖脂肪酸は生産されており,日齢を経るに従い濃度は高くなる。
(2)盲腸静脈中の短鎖脂肪酸は,ほ乳期では低濃度で推移するが,離乳によって高値を示すようになる。
(3)プロピオン酸や酪酸は肝臓で代謝されるため,末梢血中ではほとんど検出されない。
(4)離乳によって,短鎖脂肪酸の輸送体であるモノカルボン酸トランスポーター(MCT1)のmRNA発現が顕著に亢進する。よって,(2)は離乳後粘膜上皮の吸収能が亢進した結果,盲腸静脈内に短鎖脂肪酸が高濃度で確認できたと考えられる。
(5)盲腸静脈血中の酢酸と正の相関が認められたパラメータは,盲腸内容物,門脈血,MCT1 mRNA発現。負の相関が認められたパラメータはocculudin mRNA発現。
(6)盲腸静脈血中のプロピオン酸と正の相関が認められたパラメータは,盲腸内容物,MCT1 mRNA発現。負の相関が認められたパラメータはocculudin mRNA発現。
(7)盲腸静脈血中の酪酸と正の相関が認められたパラメータは,MCT1 mRNA発現。負の相関が認められたパラメータはocculudin mRNA発現。

以上の結果から,離乳以降に短鎖脂肪酸の粘膜上皮からの吸収は活発になり,盲腸静脈から門脈へ移行して肝臓へと運ばれる。肝臓でプロピオン酸や酪酸は代謝されるため,末梢血中では殆ど確認できなくなる。等のことが解明できました。