株式会社 栄養・病理学研究所

Institute of Nutrion & Pathology Inc.

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トップトピックス「ブタ流行性下痢陽性農場で飼養されるワクチン未接種母豚における生菌剤給与による繁殖成績改善効果」

「ブタ流行性下痢陽性農場で飼養されるワクチン未接種母豚における生菌剤給与による繁殖成績改善効果」

雑誌名:Animal Science Journal
ジャンル:原著論文(査読あり)
掲載年:2018年
原題:Probiotic supplementation improves reproductive performance of unvaccinated farmed sows infected with porcine epidemic diarrhea virus.
研究機関: 株式会社栄養・病理学研究所(筆頭著者・塚原),稲富動物病院,鹿児島大学共同獣医学部,東亜薬品工業株式会社,京都府立大学大学院 生命環境科学研究科
弊社職員の役割:結果考察,論文執筆

2018年8月にAnimal Science Journal誌に掲載されました「ブタ流行性下痢陽性農場で飼養されるワクチン未接種母豚における生菌剤給与による繁殖成績改善効果」について解説いたします。

内容解説:2013年にブタ流行性下痢 (PED)が沖縄県で発生し,瞬く間に日本全国に拡大いたしました。本疾病は,コロナウイルス科に属するウイルスが引き起こす疾病です。当時ニュースで大々的に報道されましたので,憶えておられる方も多いと思います。ウイルス疾患は抗生物質などを用いた治療ができませんので,発症後の処置はかなり限定的です。PEDに関しては,とくに生まれてすぐのブタが激しい下痢を起こして脱水症状になりますので,それを緩和するための輸液療法くらいしか行える手立てがありません。本研究では,分娩前から分娩後まで継続しての母豚へ生菌複合剤を給与することで,出産後の仔ブタの離乳時生存率や繁殖成績が改善されるかを検討いたしました。
20頭のワクチン未接種の妊娠母豚を10頭ずつ生菌複合剤(ビオスリーPZ,東亜薬品工業株式会社製)給与群及び無給与対照群に群れ分けしました。産仔が死亡した場合は里子を行い,試験期間を通して1母豚当たり8頭を維持し,各母豚の泌乳量を分娩後2回測定しました。分娩後7日の母豚体重が対照群よりもビオスリーPZ給与群で10 kg高値を示し,分娩後3日の泌乳量がビオスリーPZ給与によって2 kg多くなりました。また,乳清中の総IgA濃度も高値を示しました。また,発情回帰日数もビオスリーPZ給与で短縮される傾向にあり,分娩時の産仔頭数も多く,ほ乳期の死亡も少なくなりました。以上の結果から,生菌複合剤であるビオスリーPZをPED陽性農場のワクチン未接種母豚へ給与することで,免疫機能を強化させ,繁殖成績が改善することが示唆されました。
今後第2弾として,市販ワクチン接種下での生菌複合剤給与の効果について解説を行いたいと思います。