株式会社 栄養・病理学研究所

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トップトピックス「小腸絨毛が萎縮する早期離乳ブタモデルとしてのマウスの利用」

「小腸絨毛が萎縮する早期離乳ブタモデルとしてのマウスの利用」

雑誌名:Journal of Veterinary Medical Science
ジャンル:原著論文(査読あり)
掲載年:2010年
原題:A mouse model study for the villous atrophy of the early weaning piglets
研究機関:株式会社栄養・病理学研究所(筆頭著者・塚原,第三著者・山田),北海道大学創成研究機構
弊社職員の役割:研究統括,飼育管理,剖検,EGF・PDGF発現解析 (real-time PCR),小腸の絨毛高さ測定,結果考察,論文執筆

2010年2月にJournal of Veterinary Medical Science誌に掲載されました「小腸絨毛が萎縮する早期離乳ブタモデルとしてのマウスの利用」について解説いたします。

小腸絨毛写真

内容解説:多くの養豚農家では,仔ブタは3~4週齢で,母豚から分離させるいわゆる「強制離乳」を行います。離乳によって,仔ブタの小腸にある絨毛が一時的に短くなることはよく知られている現象です。絨毛は,食物を消化・吸収する最前線ですので,絨毛が短くなると消化・吸収が不全となり,成長が停滞します。よって,小腸絨毛を短くさせない,つまり萎縮させないことは,養豚産業的に重要な課題です。
これまでの研究で,様々な資材を離乳仔ブタへ給与することで,絨毛萎縮を緩和できることが報告されて来ました。我々も,以下に示すように乳酸菌体の給与が離乳期仔ブタの絨毛萎縮を緩和させることを報告して来ました。
・Lactobacillus plantarum Lq80株:https://doi.org/10.1111/j.1740-0929.2009.00692.x
・Enterococcus faecalis EC-12株:https://doi.org/10.1111/j.1740-0929.2010.00829.x
一方で,絨毛萎縮緩和を証明するためには,仔ブタを飼育・剖検する必要があり,スクリーニング・用量設定試験を行うには,資金・施設的に大きな制約がかかります。そこで本研究は,マウスで離乳仔ブタ絨毛萎縮のモデルが可能かについて検討を行いました。
マウスは通常21日で離乳させますが,目が開いているがまた親の餌を食べていない16日齢で半数のマウスを強制離乳させました。その後,17,18及び19日齢で剖検し,小腸の絨毛高さをほ乳している同日齢のマウスと比較しました。その結果,早期離乳することで,顕著に絨毛が短くなっていることがわかりました。
以上の結果から,マウスを16日齢で離乳させることで絨毛が萎縮することがわかり,本モデル系でのスクリーニング・用量設定試験が可能であることが示唆されました。実際,乳酸菌体を用いてマウスモデルでの確認後,ブタへの給与試験も行い,どちらも絨毛萎縮改善が認められております。その解説はまた後日させて頂こうと思います。