株式会社 栄養・病理学研究所

Institute of Nutrion & Pathology Inc.

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トップトピックス「日本人2型糖尿病患者における腸内環境不全を,腸内細菌網羅解析結果を元にしたPICRUSt解析で予測する」

「日本人2型糖尿病患者における腸内環境不全を,腸内細菌網羅解析結果を元にしたPICRUSt解析で予測する」

雑誌名:Journal of Clinical Biochemistry and Nutrition
ジャンル:原著論文(査読あり)
掲載年:2017年
原題:Prediction of functional profiles of gut microbiota from 16S rRNA metagenomic data provides a more robust evaluation of gut dysbiosis occurring in Japanese type 2 diabetic patients.
研究機関:京都府立大学生命環境学部,京都医療センター臨床研究センター,株式会社栄養・病理学研究所(第三著者・塚原)
弊社職員の役割:次世代シーケンスを用いた菌叢網羅解析

2017年11月にJournal of Clinical Biochemistry and Nutrition誌に掲載されました「日本人2型糖尿病患者における腸内環境不全を,腸内細菌網羅解析結果を元にしたPICRUSt解析で予測する」について解説いたします。

内容解説:ヒトを対象とした腸内細菌の研究を,現在も検討されている方は多いと思います。一方で,ヒトは実験動物や家畜と異なり,食事内容や生活習慣が個々で異なることから,元々の腸内細菌構成が著しく異なります。我々はこれまで,小児を中心に,食物アレルギー児自閉症児の腸内細菌構成変化を報告して参りました。これらの報告では,特徴的な菌叢変化が次世代シーケンスを用いた菌叢網羅解析で捉えられ,各症状との関連を示唆しております。本研究では,成人病の1つである2型糖尿病患者における菌叢変化を検討いたしました。
その結果,腸内細菌構成の変化を,統計学的な有意差を持って検出することは出来ませんでした(ブラウティア属菌のみ2型糖尿病患者で有意に低占有率化)。そこで,次世代シーケンス解析結果を元に予測的機能プロファイル解析(PICRUSt解析)を実施いたしました。そうすると,血液検査の結果である空腹時血糖やヘモグロビンA1Cの値とPICRUSt結果であるInsulin signaling pathwayやGlycolysis/Gluconeogenesisとが正の相関があることが判りました。これは腸内細菌自体の変化は不明瞭ながら,腸内細菌全体の機能は2型糖尿病患者で変化していたということを示唆しています。
以上のことから,ヒトでは個々の腸内細菌叢が異なっているため,腸内細菌構成変化を捉えることが出来ないケースでも,腸内細菌の機能を予測することで結果が見えてくる可能性があることを示唆できました。弊社では,ヒト検体に関しては,標準でPICRUSt解析を実施し,結果をお渡ししております。是非弊社へのテキスト次世代シーケンスを用いた菌叢網羅解析をご検討頂ければと思います。