株式会社 栄養・病理学研究所

Institute of Nutrion & Pathology Inc.

株式会社 栄養・病理学研究所

トップトピックス「常在腸管微生物と養豚生産」

「常在腸管微生物と養豚生産」

雑誌名:家畜感染症学会誌
ジャンル:依頼総説
掲載年:2020年
原題:常在腸管微生物と養豚生産
研究機関:株式会社栄養・病理学研究所(筆頭著者・塚原),摂南大学農学部
弊社職員の役割:総説執筆

2020年11月に家畜感染症学会誌に掲載されました「常在腸管微生物と養豚生産」について解説いたします。

内容解説:弊社のトピックスでも盛んに取り上げておりますが,次世代シーケンサーを用いた菌叢網羅解析技術が発達し,ヒトだけでなく家畜の腸内細菌叢も気軽に分析できるようになりました。そのような状況の中で,2017年以降,ブタの腸内細菌叢が健康や生産成績と関係することが複数の研究グループから報告されるようになりました。本稿では,とくに繁殖母豚に焦点を当て,常在腸内細菌叢の特徴と生産成績との関係について詳述しております。また,各農場で腸内細菌叢が固有化するメカニズムについても論述をしております。
以下に主に述べている項目を列記いたします。
①ブタの腸内細菌叢は,単胃草食動物(ウマ,ゾウ)並みに菌叢が多様でした。また,単胃草食動物と菌叢が近似し,他の雑食動物では認められなかった繊維分解菌も存在していました。
②腸内細菌叢は個体毎に固有であることはすでに知られていましたが,さらに大きくは農場毎に固有であることが示唆されました。また,農場固有の腸内細菌叢によって生産成績が左右される可能性についても記載しております。
③農場の腸内細菌叢が固有となる原因は,飼料,飼育環境,薬剤(とくに抗菌剤),ストレスなどが考えられます。さらには疾病罹患によっても腸内細菌叢は大きく変動します。
④疾患の治療又は予防を目的として投与する抗菌剤は細菌に直接影響を及ぼす薬剤ですので,腸内細菌叢も影響を受けます。ただ1 回の筋肉注射でも,少なくとも14 日間は腸内細菌叢は影響を受けることが分かっています。
⑤腸内細菌叢を改善もしくは維持する素材として、生菌剤やプレバイオティクスなどが知られています。これらの資材の効能や使用例についても記載しております。