株式会社 栄養・病理学研究所

Institute of Nutrion & Pathology Inc.

株式会社 栄養・病理学研究所

トップトピックス「離乳期仔ブタへの抗菌剤投与によって誘導される腸内細菌叢の混乱は,Bacillus subtilis QST713株生菌剤の事前飼料添加給与で緩和される」

「離乳期仔ブタへの抗菌剤投与によって誘導される腸内細菌叢の混乱は,Bacillus subtilis QST713株生菌剤の事前飼料添加給与で緩和される」

雑誌名:Animal Science Journal
ジャンル:原著論文(査読あり)
掲載年:2020年
原題:Preliminary investigation of the use of dietary supplementation with probiotic Bacillus subtilis strain QST713 shows that it attenuates antimicrobial-induced dysbiosis in weaned piglets.
研究機関: 株式会社栄養・病理学研究所(筆頭著者・塚原),エランコジャパン株式会社,摂南大学農学部
弊社職員の役割:研究統括,研究企画,腸内細菌叢網羅解析,real-time PCRを用いた大腸菌数,乳酸菌群数,総菌数測定,結果考察論文執筆

2020年10月にAnimal Science Journal誌に掲載されました「離乳期仔ブタへの抗菌剤投与によって誘導される腸内細菌叢の混乱は,Bacillus subtilis QST713株生菌剤の事前飼料添加給与で緩和される」について解説いたします。

内容解説:2020年10月19日付のトピックスでも申し上げましたとおり,ブタの育成成績が常在の腸内細菌叢と関係していることは,2017年以降我々を含め複数の研究者から報告されています。本研究では,常在の腸内細菌叢へ影響を与えている因子の一つと考えられている薬剤(とくに抗菌剤)投与による腸内細菌叢への影響を離乳期仔ブタを用いて検証しました。
一方で,生菌剤の給与は健全な菌叢維持に役立つことは広く知られています。上記仔ブタへあらかじめ生菌剤を給与しておくことで,抗菌剤投与による腸内細菌叢の変化を改善できるかについても検討いたしました。
3頭の6週齢仔ブタへは基礎飼料を給与し,他の3頭へは飼料中にBacillus subtilis QST713株を2.0×10^6 CFU/g添加した飼料を23日間不断給与しました。試験開始後14日から3日間,全頭へニューキノロン系抗菌剤を筋肉内注射し,試験開始後14, 17, 19, 21及び23日に糞便を採取しました。総菌数は抗菌剤を投与しても変化は認められませんでしたが,乳酸菌群数及び大腸菌数は抗菌剤投与で顕著に変動しました。とくに大腸菌数は,試験開始後17及び19日では検出されなくなりましたが,試験開始後21及び23日では一転して無添加群では大幅な上昇が認められました。一方で事前に生菌剤を給与しておくことでこの上昇を顕著に緩和できました。次世代シーケンサーを用いた菌叢網羅解析の結果,無添加群では抗菌剤投与前の菌叢に戻ることはありませんでしたが,事前に生菌剤を給与しておくことで抗菌剤投与後7日には元の腸内細菌叢に近似しました。以上のことから,生菌剤の給与は抗菌剤投与による腸内細菌叢の混乱を緩和することに有用な資材であることが示されました。