「哺乳期と成熟後では,同一乳酸菌給与でも回腸粘膜の応答が明らかに異なる」
雑誌名:Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry
ジャンル:原著論文(査読あり)
掲載年:2018年
原題:Ileal mucosal response to the same probiotic Lactobacillus strains is markedly different between suckling and adult mice.
研究機関:京都府立大学生命環境学部,アサヒグループホールディングス株式会社,株式会社栄養・病理学研究所(最終著者・塚原)
弊社職員の役割:研究企画,結果考察
内容解説:ヨーグルトや飲料・食品内に含まれる乳酸菌は,様々な保健効果をもたらすことが知られています。これらの保健効果の検証は,健常なヒトを対象に行われますが,検討できない部分は実験動物を用いても行われます。一方これらの検証は,実験動物にせよヒトにせよ,成熟した大人を用いるケースが殆どであり,大人の検証結果を児へ外挿するという手法がとられて来ました。一方で,ブタを用いた生後の腸管発達を検討した研究で,生後からの成長や離乳などのイベントに伴って,腸管機能は劇的に変化することを報告しております。これに着想を得て,大人と児では乳酸菌に対する腸管応答も異なるのではないかと考え,実験を行いました。
1週齢の仔マウスと7週齢の成マウスを3群に分け,IL-12産生を強く誘導するLactobacillus gasseri CP2305s株を1週間投与する群,IL-10産生を強く誘導するL. plamtarum CPA305C株を1週間投与する群,もしくは無投与対照群としました。投与終了後,回腸粘膜を採取し,トランスクリプトーム解析(mRNA発現を網羅的に解析する手法)を行いました。
その結果,仔と成マウスでは各乳酸菌投与に対する応答が全く異なることがわかりました。詳細な遺伝子発現の変化についてはここでは言及いたしませんが,少なくともほ乳中の乳児に成熟した大人の結果を当てはめるのは難しいのではないかという結果でした。