株式会社 栄養・病理学研究所

Institute of Nutrion & Pathology Inc.

株式会社 栄養・病理学研究所

トップトピックス「アシル化デンプンをキャリアとした結腸への酢酸供給が,マウスの抗不安効果を誘導する」

「アシル化デンプンをキャリアとした結腸への酢酸供給が,マウスの抗不安効果を誘導する」

雑誌名:Physiology & Behavior
ジャンル:原著論文(査読あり)
掲載年:2020年
原題:Dietary delivery of acetate to the colon using acylated starches as a carrier exerts anxiolytic effects in mice
研究機関: 九州大学大学院医学研究院心身医学,株式会社栄養・病理学研究所(第九著者・塚原)
弊社職員の役割:盲腸菌叢網羅解析,結果考察

2020年9月に,Physiology & Behavior誌に掲載されました「アシル化デンプンをキャリアとした結腸への酢酸供給が,マウスの抗不安効果を誘導する」について解説いたします。

内容解説:腸内に棲息する微生物が生産する短鎖脂肪酸が生体に様々な生理作用を及ぼすことは知られていますが,とくに近年では脳腸相関にも重要な役割を担っていることがわかってきました。
本研究では,代表的な短鎖脂肪酸である酢酸,プロピオン酸,酪酸を,アシル化デンプンを用いることで直接大腸まで届けることで,酢酸,プロピオン酸,酪酸が直接生体に及ぼす代謝的及び行動学的な効果を雄マウスを用いて検証しております。
まず,酢酸,プロピオン酸又は酪酸アシル化デンプンを給与することで,大腸内容物中の各短鎖脂肪酸濃度がそれぞれ高値を示しており,大腸に充分量の各短鎖脂肪酸を届けられていることが証明できました。行動解析試験の結果,酢酸には抗うつ様効果を示す結果が得られましたが,プロピオン酸や酪酸にはこのような効果は認められませんでした。
今回,短鎖脂肪酸研究の中でも,酢酸の生理作用が確認できたことは特筆すべきことだと考えます。