株式会社 栄養・病理学研究所

Institute of Nutrion & Pathology Inc.

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トップトピックス「初乳を与えない仔豚を用いたブタ浮腫病菌感染モデルの改善」

「初乳を与えない仔豚を用いたブタ浮腫病菌感染モデルの改善」

雑誌名:Animal Science Journal
ジャンル:原著論文
掲載年:2017年
原題:Improved porcine model for Shiga toxin-producing Escherichia coli infection by deprivation of colostrum feeding in newborn piglets.
研究機関: 国立国際医療研究センター研究所,出光興産株式会社先進技術研究所,株式会社京都動物検査センター,株式会社栄養・病理学研究所(第八著者・中山,最終著者・塚原)
弊社職員の役割:剖検,ベロ毒素産生大腸菌の定量 (real-time PCR),腸管及び全臓器の病理組織学的検査,結果考察

2017年5月にAnimal Science Journal誌に掲載されました「初乳を与えない仔豚を用いたブタ浮腫病菌感染モデルの改善」について解説いたします。

内容解説:ブタ浮腫病は志賀毒素Stx2eを産生する志賀毒素産生性大腸菌STECの感染による,離乳期の仔豚に特有な致死率および感染性の高い深刻な感染症です。これまで数回,ブタ浮腫病に関する報告を行ってきましたが,時に浮腫病感染が成立しない個体が存在し,安定した結果を得るためにはこれまで実施していた実験感染系の改良が必要でした。
産後24時間以内の母豚の初乳には,抗体や免疫細胞などが豊富に含まれることが知られています。本研究では,初乳を摂取させないことで実験感染系が安定化するのではないかと考え,出産直後の仔豚をA)24時間人工乳で飼育する群とB)別の里親の母乳で飼育する群に分けて感染成立の成否を検討しました。その結果,両群とも非感染群に比べ有意に体重増加が減少し,眼瞼浮腫や呼吸不全等の本疾病特有の臨床症状の発現も良好でした。両群とも母豚からの初乳摂取をしていないことによりSTEC感受性が高まったと結論いたしました。実験の簡便性を考慮してA)の24時間人工乳で飼育する系を選択し追試を行ったところ,STEC感染群において増体鈍化も臨床症状も再現性が高いことが確認できました。これらのことから,生まれて24時間初乳を摂取させないブタを浮腫病の実験感染系に用いることでより安定した結果が得られる可能性が示唆されました。