株式会社 栄養・病理学研究所

Institute of Nutrion & Pathology Inc.

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トップトピックス「ブタ血液中のブタ繁殖障害・呼吸障害症候群ウイルスを市販濾紙を用いることで簡便にかつ迅速に検出する」

「ブタ血液中のブタ繁殖障害・呼吸障害症候群ウイルスを市販濾紙を用いることで簡便にかつ迅速に検出する」

雑誌名:Journal of Virological Methods
ジャンル:原著論文(査読あり)
掲載年:2007年
原題:Simple and rapid detection of the porcine reproductive and respiratory syndrome virus from pig whole blood using filter paper.
研究機関: 京都府立大学生命環境学部,株式会社栄養・病理学研究所(筆頭著者・井上,第二著者・塚原),有限会社あかばね動物クリニック
弊社職員の役割:研究統括,研究企画,採血,real-time PCRを用いたウイルス検出,結果考察,論文執筆

2007年4月にJournal of Virological Methods誌に掲載されました「ブタ血液中のブタ繁殖障害・呼吸障害症候群ウイルスを市販濾紙を用いることで簡便にかつ迅速に検出する」について解説いたします。

内容解説:ブタ繁殖障害・呼吸障害症候群ウイルス(PRRSV)はRNAウイルスであるため,頻繁に変異を繰り返します。ブタがPRRSVに感染すると,マクロファージ内で増殖を繰り返すため,マクロファージに深刻なダメージを及ぼした結果,他の疾病に対する防御が極端に低下してしまいます。さらに農場内にPRRSVが侵入して猛威を振るった後,ようやくブタの免疫がPRRSVを記憶して制御下においても,PRRSVが変異を起こすことで免疫記憶から逸脱し,再度被害をもたらします。この様なことから,農場内でのPRRSVの動向を継続して調査することは重要です。PRRSVの検査は血液を用いることが一般的ですが,ブタからの採血は一定以上の技能が必要です。とくに種雄からの採血は危険を伴います。また採血後,遠心分離などで血漿もしくは血清を速やかに分取し,凍結保存しなければなりませんが,これらの作業を現場で実施することは困難です。
今回検討した濾紙は市販のFTAカードと呼ばれるもので,血液中の病原体を迅速に不活性化することが可能であり,乾燥後は長期間室温で保存可能になります。このFTAカードを用いて,PRRSVも検査可能かを検討しました。
FTAカードからRNAを抽出後,逆転写し,PRRSVをreal-time PCR法で検出いたしました。因みに弊社では,独自にPRRSV特異的プライマーを設計しております。
その結果,FTAカードによる保存でも充分PRRSVは検出できることがわかりました。PRRSVだけでなく,理論的には他の病原体でも応用可能ですので,現場でのサンプリングでお困りの方は是非一度お試しいただければと思います。