株式会社 栄養・病理学研究所

Institute of Nutrion & Pathology Inc.

株式会社 栄養・病理学研究所

トップトピックス「ブロイラーへのBacillus amyloliquefaciens TOA5001株添加飼料給与は,腸内細菌叢修飾を通じて鶏コクシジウム症の病態を緩和する」

「ブロイラーへのBacillus amyloliquefaciens TOA5001株添加飼料給与は,腸内細菌叢修飾を通じて鶏コクシジウム症の病態を緩和する」

雑誌名:Animal Science Journal
ジャンル:原著論文(査読あり)
掲載年:2018年
原題:Inclusion of Bacillus amyloliquefaciens strain TOA5001 in the diet of broilers suppresses the symptoms of coccidiosis by modulating intestinal microbiota.
研究機関:株式会社栄養・病理学研究所(筆頭著者・塚原,第三著者・中山),京都府立大学生命環境学部,東亜薬品工業株式会社
弊社職員の役割:研究統括,臨床観察,剖検,次世代シーケンサーを用いた菌叢網羅解析,腸内細菌のreal-time PCRを用いた定量解析,腸管及び全臓器の病理組織学的検査,結果考察,論文執筆

2018年4月にAnimal Science Journal誌に掲載されました「ブロイラーへのBacillus amyloliquefaciens TOA5001株添加飼料給与は,腸内細菌叢修飾を通じて鶏コクシジウム症の病態を緩和する」について解説いたします。

「鶏コクシジウム症」はエイメリア属の原虫による腸管感染症で,現在でも養鶏産業に多大な経済的な損失をもたらしています。さらに,コクシジウムの感染・増殖による腸管の損傷は,Clostridium perfringens(壊死性腸炎の原因菌です)を増殖させます。東亜薬品工業株式会社が保有するBacillus amyloliquefaciens strain TOA5001の培養上清は,C. perfringensの増殖を阻害することが試験管内で実証されています(Japanese Patent Publication No. 2016-116466)。そこで本研究では,B. amyloliquefaciens TOA5001の生菌を添加した飼料をブロイラーへ初生から給与し,28日齢で鶏コクシジウムを感染させて,コクシジウム感染症に対する予防効果,腸管内のC. perfringens増殖抑制効果について検討をいたしました。
B. amyloliquefaciens TOA5001を給与することで,コクシジウム感染による腸管傷害が顕著に改善され,盲腸内容物中のC. perfringens及び大腸菌数が有意に低下していました。腸内細菌構成を変化させている可能性が考えられましたので,盲腸内容物中の菌叢網羅解析を行った結果,B. amyloliquefaciens TOA5001給与による顕著な腸内細菌構成の変化が認められ,酪酸生成菌であるFaecalibacterium prausnitziiなどの占有率が高値化していました。以上より,B. amyloliquefaciens TOA5001は,コクシジウム感染下における盲腸腸内細菌叢を修飾し,コクシジウム症の病態を改善する可能性が示唆されました。
弊社は本研究の中心的な役割を担い,研究を遂行いたしました。本実験系は,未だ決定的な解決策が見つかっていない鶏コクシジウムをテーマにしており,最近も学会発表を行なった(「コクシジウム実験感染鶏における枯草菌給与による腸組織異常の改善」日本家禽学会2018年春季大会),依頼頻度の高い受託研究テーマになっています。是非一度弊社での受託研究をご検討ください
また,本研究でも次世代シーケンサーを用いた菌叢網羅解析を実施しておりますが,大腸菌やC. perfringensなどの主要な菌の動向だけでなく,F. prausnitziiなどこれまであまり検討できていなかった有用菌についても考察できるようになったことは大きなメリットではないかと思います。