「直腸癌における腸管粘膜および糞便の微生物叢に関するパイロット研究:術前化学放射線療法後の組織学的反応および有害事象との関連」
雑誌名:Colorectal Disease
ジャンル:原著論文
掲載年:2026年
原題:A pilot study of gut mucosal and faecal microbiota in rectal cancer: Associations with histological response and adverse events following preoperative chemoradiotherapy
研究機関:東京大学医学部,摂南大学農学部,株式会社栄養・病理学研究所(第十五著者・塚原,第十六著者・大橋),滋賀医科大学
弊社職員の役割:DNA抽出,菌叢網羅解析
【目的】局所進行直腸癌(LARC)に対して術前化学放射線療法(CRT)が施行されていますが,その有効性や有害事象には患者間でばらつきがあります。本研究では,腸内細菌叢とCRTの有効性および有害事象との関連を明らかにすることを目的としております。
【方法】過去6ヶ月間に抗菌薬やプロバイオティクスの投与歴がないLARC患者21名を検査対象としました。CRTの前後で腫瘍部粘膜,非腫瘍部粘膜,および糞便検体を採取し,細菌DNAを抽出しました。16S rRNA遺伝子のV3およびV4領域を標的とした菌叢網羅解析を行っております。CRTの主要な有害事象である病理学的完全奏効(pCR)および治療に伴う下痢を予測し得る細菌分類群を探索するため,LEfSe(Linear discriminant analysis effect size)を用いて解析しております。
【結果】21名の患者のうち,5名がpCRを達成し,7名が重度の治療に伴う下痢を経験しています。いずれのサンプリング部位においても,CRT前後で各群間の細菌叢のα多様性およびβ多様性に有意差は認められませんでした。LEfSeを用いた探索的解析により,CRT前の腫瘍部粘膜におけるPeptostreptococcus属,Coprococcus属,およびPhoceaicola属がpCR達成の有意な指標として特定されました。また,Collinsella属,Haemophilus属およびDesulfovibrionaceae科が,治療に伴う下痢と関連していました。菌叢の構成はCRT前後で変化し,とくにFusobacterium_C属やその他の分類群の減少が認められました。腫瘍領域におけるβ多様性も有意に変化しております。
【結論】以上のことから,直腸癌における腸内細菌叢とCRTの治療効果および治療に伴う下痢の発生との関連が示唆されました。栄養・病理学研究所では,糞便のみならず,腫瘍部粘膜からの細菌DNA抽出及び菌叢網羅解析も実施しております。