株式会社 栄養・病理学研究所

Institute of Nutrion & Pathology Inc.

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トップトピックス「Enterococcus faecalis KH2株の菌体投与は細胞性免疫を活性化させ,腫瘍発達に対して抑制効果を現す」

「Enterococcus faecalis KH2株の菌体投与は細胞性免疫を活性化させ,腫瘍発達に対して抑制効果を現す」

雑誌名:Bioscience of Microbiota, Food and Health
ジャンル:原著論文(査読あり)
掲載年:2018年
原題:Stimulation of murine cell-mediated immunity by dietary administration of a cell preparation of Enterococcus faecalis strain KH-2 and its possible activity against tumour development in mice.
研究機関: 株式会社栄養・病理学研究所(筆頭著者・塚原,第二著者・中村),有限会社バイオ研,NPO法人日本サプリメント臨床研究会,株式会社ブロマ研究所
弊社職員の役割:研究統括,研究企画,飼育観察,剖検,ナチュラルキラー活性及び細胞障害活性測定(フローサイトメトリー),脾臓細胞中のNK活性関連因子mRNA発現解析(real-time PCR),脾臓細胞中の活性型T細胞割合測定(フローサイトメトリー),結果考察,論文執筆

2018年7月にBioscience of Microbiota, Food and Health誌に掲載されました「Enterococcus faecalis KH2株の菌体投与は細胞性免疫を活性化させ,腫瘍発達に対して抑制効果を現す」について解説いたします。

内容解説:乳酸菌給与によって,非自己の細胞を任意に攻撃するナチュラルキラー(NK)細胞が活性化することは,よく知られる効能の一つです。NK細胞は非自己の細胞,いわゆるウイルスに感染してしまった細胞やガン化した細胞を攻撃し,結果としてインフルエンザなどのウイルス予防効果やガン増殖抑制効果を示します。今回は,有限会社バイオ研様が市販されておりますEnterococcus faecalis KH-2株をマウスへ給与して,以下の実験を行いました。
まず,健常なマウスへKH-2株を1週間継続して経口給与したところ,容量依存的な脾細胞中NK活性の亢進が認められました。同時に脾細胞中のNK活性関連(IFN-gamma, granzyme A, granzyme B, perforin 1)のmRNA発現亢進を確認し,NK活性亢進を裏付けるデータも得ております。
次にKH-2株給与によるガン細胞浸潤抑制効果について検討を行いました。KH-2株を継続して給与しているマウスへ肉腫細胞であるMeth-Aを投与したところ,脾細胞中NK活性及びMeth-A細胞に対する細胞障害活性が顕著に亢進し,その結果マウスの生存曲線が改善をいたしました。さらに特筆すべきこととして,脾細胞中の活性型リンパ球割合を分析するために,そのマーカーであるCD28,CD69についてフローサイトメトリー解析を行っております。その結果,CD4またはCD8陽性細胞中のCD28陽性細胞や,CD4またはCD8陽性細胞中のCD69陽性細胞割合に顕著な変化は認められなかったものの,CD28CD69共陽性細胞割合については顕著な亢進が認められました。これまでCD28CD69共陽性細胞については殆ど検討がされておりませんでしたが,今後重要な分析項目として認知されるかもしれません。
以上のことから,Enterococcus faecalis KH-2株を給与することで,細胞性免疫(NK活性,細胞障害活性など)を活性化させ,ガンや肉腫細胞などの非自己細胞を攻撃することによる病態緩和・予防効果が期待できることが示唆されました。