株式会社 栄養・病理学研究所

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トップトピックス「Bifidobacterium longum BR-108株の経口投与は,その生死に係わらずマウス盲腸内菌構成を変化させ,免疫機能を亢進させる」

「Bifidobacterium longum BR-108株の経口投与は,その生死に係わらずマウス盲腸内菌構成を変化させ,免疫機能を亢進させる」

雑誌名:Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry
ジャンル:原著論文(査読あり)
掲載年:2018年
原題:Oral supplementation of Bifidobacterium longum strain BR-108 alters cecal microbiota by stimulating gut immune system in mice irrespectively of viability.
研究機関: コンビ株式会社,株式会社栄養・病理学研究所(第二著者・塚原),京都府立大学生命環境学部
弊社職員の役割:次世代シーケンスを用いた菌叢網羅解析,結果考察,論文執筆

2018年7月号のBioscience, Biotechnology, and Biochemistry誌に掲載されました「Bifidobacterium longum BR-108株の経口投与は,その生死に係わらずマウス盲腸内菌構成を変化させ,免疫機能を亢進させる」について解説いたします。

内容解説:生菌剤や生菌が含まれたヨーグルトなどによる保健効果については,よく知られています。生菌剤やヨーグルトに含まれている有用な生菌は,生きて腸に届くことが保健効果を発揮する大前提です。一方で,生菌を安定した品質で消費者に届けることはかなり高等な技術を要します。要するに他の雑菌の混入を防ぐための殺菌処理ができないため(殺菌処理をした場合,有用菌も死んでしまう),「生きていてほしい菌だけを残す」という二律背反的な行為を達成しなければなりません。そういった意味では,納豆菌など「芽胞」と呼ばれる「タネ」の様な形態になれる有用菌を選択されているケースも多くあります。この場合,もろとも殺菌処理しても芽胞菌は死滅しません。ところが,ヒト用生菌剤の主力であるビフィズス菌や乳酸桿菌は芽胞を形成しないため,生菌剤として提供するためには,多大な労力を費やす必要があるのです。一方で,生菌を死菌にしてしまうと製品の管理は当然簡単になりますが,生菌で期待していた効果が失われてしまうというデメリットもあります。これまで,死菌体による効果といえば,「免疫活性化」でした。本研究では,「免疫活性化」以外にも死菌体給与で生菌と同様の効果を示すパラメータが本当に無いのか?について検証いたしました。下記にその概要をご紹介いたします。
Bifidobacterium longum BR-108株を培養して生菌を回収後,一部を加熱殺菌しました。マウスを3群に分け,無給与対照群,生菌給与群,死菌体給与群として,毎日被験物質を給与し,4週間後の腸内細菌構成,及び腸管免疫の変化を解析いたしました。腸内細菌構成は次世代シーケンサーを用いた菌叢網羅解析で,腸管免疫の変化はIL-4, IL-6, IL-10, IFN-γ及び TGF-βについてreal-time PCRを用いた遺伝子発現解析でそれぞれ行いました。その結果,生菌給与でも死菌体給与でも腸管の免疫活性化能は変わらず,また腸内細菌構成の変化も生菌と死菌でかなり似通っていたという結果になりました。
これまで“生菌”であることが重要と考えられてきた,腸内細菌叢の修飾が死菌体給与でも同様に起こっていることを示すことが出来ました。最近,死菌体は応用の手軽さからかなりシェアを伸ばしていると思います。弊社では2018年4月18日でもご紹介しております様に,解説記事を依頼されるほどに死菌体を研究素材にした研究は実績がございます。死菌体を対象にされたご研究をお考えの方は是非一度弊社へご相談頂ければと思います