株式会社 栄養・病理学研究所

Institute of Nutrion & Pathology Inc.

株式会社 栄養・病理学研究所

トップトピックス「ラット海馬septal-temporal軸における神経栄養因子およびその受容体遺伝子の発現差」

「ラット海馬septal-temporal軸における神経栄養因子およびその受容体遺伝子の発現差」

雑誌名:Animal Science Journal
ジャンル:原著論文(査読あり)
掲載年:2014年
原題:Differential expression of genes encoding neurotrophic factors and their receptors along the septal-temporal axis of the rat hippocampus.
研究機関:東京農工大学大学院連合農学研究科,茨城大学農学部,茨城大学農医連携プロジェクト,株式会社栄養・病理学研究所(最終著者・塚原)
弊社職員の役割:RNA抽出,海馬中の神経栄養因子・受容体mRNA発現解析(real-time PCR),結果考察

2014年9月にAnimal Science Journal誌に掲載されました「ラット海馬septal-temporal軸における神経栄養因子およびその受容体遺伝子の発現差」について解説いたします。

内容解説:近年,栄養・病理学研究所では精神的ストレスとその緩和物質探索に力を入れており,受託実績として数編の原著論文も公表しております。本研究では,一連の精神的ストレス検討を行うときの重要な脳部位である「海馬」に焦点をあてた,基礎研究を行っております。
海馬は,記憶・学習や情動行動を制御する部位と言われております。また,海馬の機能はseptal(中隔領域)-temporal(側頭領域)軸に沿って異なることが知られており,例えば,空間学習や記憶は中隔領域が,情動行動は側頭領域が関与することが知られています。そこで,我々はラット海馬septal-temporal軸における神経成長因子(NGF),脳由来神経栄養因子(BDNF),ニューロトロフィン-3(NT-3)とそれらの受容体(TrkA,TrkB,TrkC)の遺伝子発現レベルをreal-time PCRにて定量し,部位による発現レベルの差を明らかにいたしました。
その結果,海馬中隔領域におけるNT-3とTrkA遺伝子の発現レベルは,中央部および側頭部よりも高発現しておりました。ラットの海馬歯状回における神経細胞の新生は,側頭部よりも中隔部でよりその頻度が高いことが知られており,NT-3とTrkAの高い発現レベルと関係する可能性が示唆されました。以上の結果から,海馬における分子生物学的および生化学的研究には,海馬のseptal-temporal軸に沿って適切な部位をサンプリングすることが重要であることが示されました。