株式会社 栄養・病理学研究所

Institute of Nutrion & Pathology Inc.

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トップトピックス「乳酸菌給与による小腸応答の部位差」

「乳酸菌給与による小腸応答の部位差」

雑誌名:乳酸菌学会誌
ジャンル:依頼総説
掲載年:2019年
原題:乳酸菌給与による小腸応答の部位差
研究機関: 株式会社栄養・病理学研究所(単独著者・塚原)
弊社職員の役割:総説執筆

2019年5月に日本乳酸菌学会誌に掲載されました「乳酸菌給与による小腸応答の部位差」について解説いたします。

内容解説:小腸は皆様もご承知の通り,「長い」器官です。小腸は,口から摂取した食物を分解し(消化),吸収する器官であることはよく知られています。また,小腸は多種多様な細菌が棲息する場所であり,これらの細菌が容易に体内に入ってこなくするため,免疫装置も発達しています。生菌剤(プロバイオティクス)などは経口で摂取された後,これらの免疫装置を介して体内に受容され,健康維持に役立ちます。
小腸は概して消化吸収を行う器官ですが,解剖学的には十二指腸,空腸及び回腸に分けられています。一方で機能的には,小腸の前半では消化を,後半で吸収を主に担っているものの,明確に境界があるわけではありません。実は,乳酸菌に対する小腸の応答も均一的ではなく,小腸部位によって反応が異なります。例えば乳酸菌給与による小腸応答の一つである絨毛伸長効果は,小腸の中央部や回盲部では顕著に確認できますが,全く応答しない部位も存在します。また,小腸には腸管免疫を担うパイエル板 (PP) が存在しますが,予め乳酸菌を給与したマウス小腸の最前部(胃側)にあるPPと回盲部PPを採取し,サイトカインのmRNA発現を解析したところ,乳酸菌給与による応答は両者で異なっていました。
これらのことから,乳酸菌の機能性を検討する場合,小腸の採材部位についてとくに注意を払う必要があると考えています。